いままで陸遜は馬に乗る、という動作に個性を見たことがなかった。
馬の手綱をつかみ、鞍に足をかけて跨る。ただそれだけのことだ。多少手際や体格の違いで印象は変わるが跨った姿で個人を判別したことはいまだかつてない。
「軍前方に伏兵発見。第1隊、および第2隊包囲されました!」
飛ぶようにかけてきた伝令は叫ぶように陸遜にそう告げた。
まさか、陸遜はそう叫ぼうと思ったが軍師としての責務がそうはさせなかった。
先見している隊といま陸遜がいる本陣は約三里は離れている。
いま包囲されている隊は軍全体の約三分の一の兵力だ。伏兵をのぞかないと後の戦に響く。しかし件の隊に非常事態に柔軟に対応できそうな将はいない。
「甘寧殿」
「おうよ」
陸遜の後ろにすわっていた甘寧がゆるりと立ち上がった。
「500、でいけますか」
「敵さんは少なく見積もって倍か」
「ええ」
「了解」
そういって甘寧は鈴をならして幕舎をでた。
甘寧の愛馬を兵卒が引いてくる。
兵卒から手綱を受け取り、甘寧は馬の背に手をかけ鞍へ足をかけた。そうして馬上の人になる。
まるで彼の体に描かれた龍が天に昇るような、一連の動きだ。
陸遜はそれを純粋に美しい、とそう思った。
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No蝶子様です。(美しいでしめたから)
筆ならしに行動描写をしてみよう企画 その1
私の文章はギャグじゃないととたんに堅くなる・・・・・
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